プロジェクトID番号06-2
In silico創薬技術を活用した転写因子阻害作用を有する新規抗がん剤の創製
総括研究代表者 浅井 章良(静岡県立大学大学院薬学研究科・教授)
1.プロジェクト開始から現在までの研究の要旨
リード化合物の構造最適化に使用するためのドッキングプログラムPD-DOCK、及びFragmentLinkerのプロトタイプを完成させ、PD-DOCKに関してはその精度を向上させ、ターゲットに対するパラメータを最適化する手法を確立した。STAT3のSH2ドメイン構造を用いたバーチャルスクリーニングを実施し、市販化合物ソースより1)DOCK4により200化合物、2)Glideにより194化合物、3)既存SH2リガンドとの構造類似性により239化合物を選択、収集し、化合物管理体制を整えた。一方、ウェットスクリーニング用アッセイ系として、1)STAT3恒常的活性化型がん細胞株に対して選択的な増殖阻害を指標としたアッセイ系、2)SPR(表面プラズモン共鳴)によるSTAT3-SH2ドメイン相互作用直を指標にしたアッセイ系、3)ルシフェラーゼレポーター系による細胞内STAT3転写活性阻害を指標にしたアッセイ系、4)アルファースクリーン(増幅発光近接ホモジェニアスアッセイ)法によるSTAT3選択的二量体化阻害を指標としたアッセイ系を構築した。これらのアッセイ法を活用し、バーチャルスクリーニングにより選抜された化合物群からの絞込みを実施し、3種類の異なる骨格のリード候補化合物(STX-0119、STX-0005/0845、STX-0159)を同定し、その合成ルートを確立した。さらに、ヒトリンフォーマ細胞株U937を用いたNOD/SCIDマウス復水型腫瘍モデルにおけるSTX-0119のin vivo 評価を実施した結果、STX-0119投与群において延命の傾向が確認され、体重減少などの明らかな副作用は認められなかった。詳細な特許、文献調査から、本物質は既知物質ではあるが、STAT3阻害剤用途の報告はなく、また構造最適化により物質特許取得につながる新規物質群の創出が期待されるため、重要なリード化合物と位置付け、物性改善(溶解性向上)、及び活性増強を目的とした誘導体合成を開始した。既に、初期誘導体については特許用データを整理し、特許出願の準備を完了した。
2.平成19年度(単年度)の研究の要旨
プログラム開発に関しては、リード化合物の構造最適化に使用するための、FragmentLinkerのプロトタイプを完成させた。また、前年度構築したPD-DOCKに関してはその精度を向上させ、ターゲットに対するパラメータを最適化する手法を確立した。STAT3阻害剤探索に関しては、今年度新たにHTS系としてアルファースクリーン(増幅発光近接ホモジェニアスアッセイ)法によるSTAT3二量体化阻害を指標としたアッセイ系を構築した。また他のSH2タンパク質であるGrb2を用いることにより、STAT3に対する選択性の評価も可能とした。これまでのアッセイ系で選択してきた化合物の中から、選択的に二量体化阻害する物質を絞り込み、3種類の異なる骨格のリード候補化合物(STX-0119、STX-0005/0845、STX-0159)を同定し、その合成ルートを確立した。さらに、STX-0119及びSTX-0005/0845については中量合成に成功し、グラムスケールでの原末を取得し高次評価に進めた。乳癌、肺癌、大腸がん、造血器腫瘍の培養細胞株を対象に抗細胞活性を検討した結果、STX-0119が造血器腫瘍でのT細胞白血病やリンパ腫細胞株に対して対照化合物であるAG490(JAK阻害剤)に比べて強い増殖抑制効果を示した。そこで、NOD/SCIDマウスにおいてU937リンパ腫細胞の腹膜播種モデルを構築し、STX-0119の抗腫瘍活性を評価した。20mg/kg, 40mg/kgの5回腹腔内投与による予備的評価結果では、体重減少などの明らかな副作用は認められず、無治療群に比較して延命の傾向を示した。しかし低溶解性に起因すると考えられるデータのばらつきが見られたことから、本化合物の溶解性向上の必要性が示唆された。詳細な特許、文献調査から、本物質は既知物質ではあるが、STAT3阻害剤用途の報告はなく、また構造最適化により物質特許取得につながる新規物質群の創出が期待されるため、重要なリード化合物と位置付け、物性改善、及び活性増強を目的とした誘導体合成を開始した。既に、初期誘導体については特許用データを取得し、特許出願の準備を完了した。
3.研究分担体制
@STAT3阻害剤のスクリーニングと構造最適化に関する研究
(浅井章良 静岡県立大学大学院薬学研究科 教授)
A STAT3の立体構造に基づく阻害剤の研究 (古谷利夫 株式会社ファルマデザイン 社長)
B STAT3阻害剤の誘導体合成による構造最適化 (大塚雅巳 熊本大学大学院医学薬学研究部 教授)
C STAT阻害候補化合物のin vitro, in vivoでの抗腫瘍活性の評価
(秋山靖人 静岡県立静岡がんセンター研究所 免疫治療研究部 部長)
D 化合物ライブラリー管理とデータベースの構築及びリード化合物のラボスケール合成に関する研究
(小郷尚久 静岡県環境衛生科学研究所 副主任)
E 特許戦略、臨床試験に向けた準備等(協力機関)
(井上謙吾 財団法人しずおか産業創造機構ファルマバレーセンター 所長)